私は数年前まで、ベトナムという国にいました。
当時は、まだ20代後半で、
「なんとか自分を変えたい!」と一歩踏み出したものの、
数年も経つと、はじめは目新しかった風景も、
慣れ親しんだ景色へと変わってしまっていました。
ベトナムでの生活は、お金と時間だけ持て余し、
たまに行うサッカー以外は、特に運動もせず、
毎日深夜までバーや飲み会や参加したり、徹夜で麻雀したり、と目も当てられない生活を送っていました。
そんな生活を3年も続けた頃、
ときどき参加するサッカーの集まりで、
5歳児に「RED、大きくなったね!」
と、
30歳を手前にした男子にありがちな、
「横への成長」(デブ)
を指摘されたのです。
このときは、本当に堪えました。
■ そこで今一度、自分がどうしたいのか?を考えてみることにしました。
志願して来たベトナムでしたが、
なにも成し遂げられていない気がしました。
「今の仕事に打ち込めるか?」と言えば、正直YESとはいえませんでした。
「他の何かがしたい」と思うものの、
MBAの勉強や英語のスクールに通っても、
とくに打ち込めるわけでもなく、
気持だけが宙ぶらりんの状態でした。
ですが、
「太った自分」だけは、受け入れ難いものでした。
「ベトナムに来て、自分がなにがしたいか、まだわからないけど、
少なくとも、こんな太った自分は望んでいない」と。
そう思った時、
気づけば走りだしていました。
シューズもウェアもまったく気にせず、
ベトナムのバイクの排気ガスと騒音が巻き上がる街なかを。
でも、長くは続きませんでした。
10分も走ると、息が切れ、脚は上がらなくなり、
歩いてしまい、とぼとぼと惨めに家路をたどりました。
「やっぱり無理かぁ………」
と、ベッドに横たわり、寝ようとしましたが、
寝付けませんでした。
どこかで「これじゃダメだ」と思う気持ちがあったのでしょう。
さすがにもう一度外で走るというのは、できませんでしたが、
おもむろにパソコンの前に座ってネットをチェックし始めました。
そこで見つけたのです。
【全長250km、衣食住すべてを背負って気温50度の砂漠を走るサハラマラソン】
という文字を。
そこから、私は何を思ったか、
荒唐無稽にも「サハラマラソン完走!」を掲げ、
Facebookで事あるごとにそれを言い続け、
走りまくる生活を始めるようになりました。
ちなみに、
走り始めたときの体重は約73kg。
走るだけでなく、食生活の改善や生活習慣の見直しも行い、
半年後には60kgを切るようになっていました。
毎日毎日走り続けたおかげで、
今では、オホーツク海とモスクワを往復するより長い距離を走り、
その間、フルマラソンはもちろんのこと、
トレイルランやウルトラマラソンなどにも参加、
単独で115km走を試みたり、
奈良の山奥で遭難の一歩手前までいくような武者修行をしたり、と、
普通の人では考えられない大会に参加して周りました。
全部が全部、うまくいったわけではありませんが、
ひとつひとつの取組みに対し、本気で取り組んできたからこそ、
成し遂げられたと思います。
このようにいろいろトライしてきた私ですが、
すべてが順風満帆であったわけではありません。
むしろ、逆境からのスタートでした。
東南アジアの蒸し暑い気候の中、
走っていると嫌気が差すことなんて多々ありましたし、
デブの自分が走っていること自体に、引け目を感じることもありました。
それでも、走るのを止めなかったのは、
過去の自分と決別して、「ありたい自分」になりたかったからです。
そして、一番チカラになったのは、
「サハラマラソンというむちゃくちゃな目標にトライしようとしている自分」
をサポートしてくれる人たちがいたからです。
何度も、やめようとしたときに、その人達の顔がよぎり、
私自身を奮い立たせてくれました。
このときに一人では、絶対に挫折していたと思います。