『19th day ー 有言実行を果たすために』
7:53 AM
真夜中、だれかが僕を揺すり起こした。
何か言ったが、頭が回らない。
声の主をみると、警察官だった。
2人一組でパトロールしているのだという。
さすがに駅のベンチでは見つかってしまったようだ。
「危険物はないか?」と問われ、
正直に万能ナイフをみせる。
それだけじゃなく、他の荷物も全部点検させられる。
免許証も提示させられた。そして質問攻め。
「どこから始めて、どこに行くのか」
「寝どまりは、ホテルも使うのか」
「お金はどうしているのか」
「今、仕事しているのか、前職は何をやっていたのか」
どの質問の答えも予想だにしないものだったのだろう。
片方の警察官は終始口が半開きだった。
結局、20分くらいで警察官たちは引き揚げたが、
その後、僕はなかなか寝付けなかった。
朝起きると、やはり雨だった。
「どうしよう…」と、呆然としていたが、
どうもこうも行くしかない。
雨は考えず、とにかく今すべきことを淡々と行う。
時間とともに、通学する学生や通勤する社会人がちらほら現れてきた。
僕も荷物が整った。あとは行くだけである。
が、足が進まない。
「雨が弱くなれば行こう」なんて考える。
でもいっこうに弱まる気配はない。
もうすぐ8時である。
ここにずっといて、じろじろ見られるのも嫌だ。
「行くしかない」
意を決して行く。
雨は止むどころか、さらに強さを増した。
堪らず、一度民家の軒先で雨宿りしたが、
屋根からつたう排水管から雨が溢れ出るほどだった。
それでも走った。
限界まで走った。
登り、雨、歩道狭い…これ以上にない悪条件。
雨は降ったり止んだりを繰り返す。
確実に進んではいるが、長い。
トラックの往来が激しく、気を使わなければならない。
この光景を写真に撮ろうとしたが、
iPadがびしょ濡れになってしまう。
いや、そんな気力さえでてこない。
何も考えない、考えられない。
ただただ登り続ける。
登りはじめて、4時間と16分。
やっと、やっと!のことで最高地点に到着。
ここが4号線最高地点である。
このときは達成感よりも、
「まだ半分以上ある」という現実の方が大きかった。
もうしばらく行ってコンビニで昼にしたが、
また雨が降り、雨の中、弁当を食べた。
このとき雨に打たれながら食べた昼食は非常に惨めで、
「せっかく峠が終わったのに、この有様かよ…」と嘆いた。
また、雨の中、合羽を羽織りながら少し寝た。
昼からは、登り坂が下り坂に変わったものの、
天気は相変わらず雨が降ったり止んだりを繰り返す。
道は、歩道もちゃんとしていたが、
向かい風が吹くようになった。
僕自身は前半の上り坂で大半の体力を使い果たしていたので、
いくら下り坂と言えど、きつかった。
途中、秋祭りに遭遇した。
最初は出店の前を何気なく通っていたが、
子供たちが太鼓や笛を踊りながら道路を練り歩くのをみると、
さすがにその前をボロボロの格好をした僕が歩くのは気が引けた。
6時前、ようやく目的地・好摩に到着。
GoogleMapで見つけた宿に行ってみると、
学会や復興支援だかなんかで、部屋は空いてないという。
この付近に宿はないかと尋ねると、
10km北に行くか、20km南に行ったホテル街しかない、という。
北に行くとは、逆戻りすることだし、したくない。
20kmもこれ以上走れない。
しかも、その先にあるのが、ラブホだなんて気持ちが乗らない。
宿をあとにして、GoogleMapを調べる。
こうなったら、公園で野宿しかない。
幸運にも遠くないところに公園があった。
そこを今夜の寝床にした。
いつも野宿していて思う。
「野宿しなけりゃ、どれだけ楽か」
夜泊まるところの心配はいらない。寒くもない。
荷物も1kg以上軽い。
充電の心配もいらない。
服だって洗える。
風呂も入れる。
それでも野宿をするのは、
有言実行を果たすためだ。
この旅の道中、野宿するしないなど、
誰も気に留めていないかもしれない。
楽をしようと思えば、いくらでもできるのである。
それでも、一度口にした以上、
できるだけ野宿はするようにしている。
(2日連続は不本意な形だが笑)
これは意地なのかもしれない。
だれも見ていないときに、自分を躾られるか。
それが独りで旅する者の資質を問われているのではないだろうか。
今日の移動距離:48km
累計:942km
東京まで:あと536km
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