『33th day ー 絶対に巻き返す！』

8:04 AM

SS木さんは仕事がるあるので、8時に出なければならなかった。
僕としても、今日は箱根越えなので、
なるべく早めに出るつもりだったので、好都合だった。
SS木さんは近道があると言って、山道までスーツ姿で案内してくれた。
ほんとうに最後までサービス精神旺盛である。見習わなければ。

山道を抜けてから鶴岡八幡宮でお参りして行った。
神社仏閣と言ったものは、あまり信じていないが、
SS木さんに勧められたこともあり、参ることにした。
賽銭で100円だけ入れて、祈ることはただ一つ。
「今日だけでいいから、無事に箱根越えさせてくれ」
一ヶ月後の佐多岬、10日後の大阪ではなく、
今日。今日の箱根越え。それだけである。

鶴岡八幡宮からまっすぐ下ると、久しぶりにヤツが現れた。
広大に拡がる太平洋、つまりは海！
ほんとうに久しぶりである。青森以来、2週間ぶり(？)である。
長く待ちわびたぜ、本当に。
これで一気にテンション回復である。
日光もかなり強いが、これで走れる(^O^)
少し休憩していると、渡辺さんというライフセーバーの方に話しかけられた。
前にも、僕のような走っている人間を見たらしい。
今はその人は北海道だという。
自分がいた9月中旬でさえ、寒かったのだから、
今頃は相当寒いに違いない。
渡辺さんは別れ際にエネルギーバーとウィダーインゼリーを大量にくれた。
本当に持ち切れず、コンビニの袋をぶら下げたまま走るぐらいだ。
今日はこれで、いや、明日もこれで補給食にはこまりそうにない笑

鎌倉、江ノ島、平塚、と気持ちの良い海岸線が続く。

富士山に江ノ島、江ノ電、そして箱根峠。

もうテンション上がりっ放しである。

海の写真を撮っていると、ランナーに抜かれた。
この辺りは、たくさんランナーが走っていて当然抜かれて行ったが、
その時抜かれたランナーはそれほど早くなく、
頑張れば追いつけそうだった。
気合を入れて走り、追いつくと話しかけられた。
佐藤さんという平塚で自動車の教習所で教えている教員の方だった。
これから平塚まで走るというので、
ご一緒させてもらった。
このランの企画とかベトナムにいたことなど、いろいろ話したが、
「ベトナムでは免許なしで走る方が経済的」
という交通事情について話したのは失敗だった。笑
結局、佐藤さんとは1時間半ぐらい一緒に走ってもらった。
自分一人では、暑くて耐えられそうになかったので、すごく助かった。

 
午後5時、ここまで走り続けた。
いや、走ろうとしてきた。
左足が痛む、のではなく、
左足の痛みはもう当たり前になってしまった。
思考が鈍る。物事を処理する能力がだんだん下がってくる。
体は、もうまともに動く状態ではないことは分かっている。
まだ、20kmあるのだ。
しかも、これからが登りの本番、箱根峠である。
夕暮れに二つコブの山を見た時、
これから起こることを考える力でさえなかった。
もう前に進むしかないのだ。
走る会の会長が言っていたように、
「最後は追い込む」
これしか今の状況を打破できるアイデアはなかった。

しばらくコンビニで座り込んでいたが、
寒さが体の芯まで伝わり、このまま凍え死にそうな気がしたので、
これはいかん、と、とにかく走り出すことにした。
行かないといけないことには変わりはない。
もうなにも考えない。箱根まで7kmとある。
とにかくそこまで行こう。
そこで自分がどのような状態になっているのか、
どこまで行けるか、箱根峠を越えられるかどうかわからないが、
行けるところまで行こう。
もう日は暮れて、夜になった。
走り出すと、足は痛んだが、少しづつだが走れた。
たぶん6km/hぐらいだろう。坂だったこともあり悪くはないと思う。
音楽に身を任せ、コツコツ走り、
箱根まで来たところだった。
走っていると、60代ぐらいのおじいさんに呼び止められた。
「これから箱根越えをする」と言うと、
即答で「それは無理だ」と返ってきた。
続けて「ウチに泊まっていかないか？」
とも言った。
(でも、行かないと…)、と思っていたが、
確かに自分の足の状態が良くないことは知っている。
たぶんこのまま行くと、
夜中に芦ノ湖に着くだろう。
しかも、芦ノ湖はもっと寒いし、野宿をしなければならない。
iPadの充電も少ない。
そして、ここからが急な坂となる…
いろいろ考えて悩んだが、お言葉に甘えて泊めていただくことにした。

今日走れなかった分は明日走ればいい。

絶対に巻き返す‼︎

今日の移動距離:47km

累計:1580km
東京まで:あと452km